森永卓郎流「生き抜く技術」 31のラストメッセージ

森永卓郎氏は、日本を代表する経済評論家・エコノミストとして知られています。

1995年から武蔵大学経済学部教授を務め、テレビやラジオにも多数出演しています。

『森永卓郎流「生き抜く技術」ーー31のラストメッセージ』は、人生100年時代を幸せに生き抜くための知恵と実践的なアドバイスをまとめた一冊です。

2023年4月に講談社から発売された本書は、森永氏が70歳を迎えるにあたり、自身の経験と経済学の視点から導き出した31の人生哲学を伝えています。

「ラストメッセージ」に込められた真意

人生100年時代への警鐘と希望

本書は単なる自己啓発書ではありません。

森永氏は冒頭で「ラストメッセージ」という言葉を使った理由を説明しています。

それは、日本社会が大きな転換点を迎えている現在、これまでの常識が通用しなくなっているという危機感からです。

日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少し続けています。

2020年には7,500万人となり、2065年には4,500万人まで減少すると予測されています。

この人口動態の変化は、私たちの生活基盤を根本から変えようとしています。

森永氏はこうした変化を「危機」としてだけでなく、「新たな可能性」として捉えることを提案しています。

お金と向き合う新しい知恵

「節約」より「投資」の時代へ

森永氏は従来の「節約」中心の金銭感覚から脱却し、「投資」を重視する考え方を提唱しています。

本書では具体的な資産形成のアドバイスとして以下の点が挙げられています。

特に注目すべきは、森永氏が提唱する「50/30/20ルール」です。

収入の50%を生活必需品に、30%を自己投資や趣味に、20%を貯蓄・投資に回すという考え方です。

このバランス感覚は、若い世代だけでなく中高年にも役立つ視点と言えるでしょう。

キャリアと働き方の再設計

「終身雇用」神話からの脱却

森永氏は日本型雇用システムの限界を指摘しています。

終身雇用制度は崩壊しつつあり、一つの会社に依存するリスクが高まっていると警告しています。

特に注目すべきは、森永氏が提唱する「3つの収入源」の考え方です。

「本業」「副業」「投資」という3つの柱を持つことで、経済的なリスクを分散させることの重要性を説いています。

幸福度を高める人間関係の構築

「孤独」を恐れず、「つながり」を選ぶ

森永氏は人間関係が幸福度に与える影響について、興味深いデータを紹介しています。

米国ハーバード大学の研究によれば、幸福度に最も影響するのは「良好な人間関係」だとされています。

森永氏は特に「選択的孤独」の概念を提唱しています。

必要に応じて人と交流し、必要に応じて一人の時間を持つという柔軟性が現代社会では重要だと指摘しています。

健康寿命を延ばす実践的方法

「予防医学」と「自己管理」のすすめ

人生100年時代を生き抜くには、健康が最も重要な資本です。

森永氏は自身の健康管理の経験を踏まえ、具体的なアドバイスを提供しています。

特に注目すべきは、森永氏が強調する「健康への投資」という考え方です。

若いうちからの健康管理が将来の医療費削減につながるという経済的視点も提示されています。

デジタル革命を生き抜く知恵

AIと共存する新しい生き方

森永氏はデジタル革命、特にAIの発展が私たちの生活や仕事に与える影響について言及しています。

AIによって多くの仕事が代替される可能性がある一方で、新たな機会も生まれると指摘しています。

特に「AIとの共創という概念は、今後の働き方を考える上で重要な視点です。

森永氏は技術に振り回されるのではなく、技術を活用して自分らしい生き方を実現することの大切さを説いています。

これからの時代を生き抜くために

本書の締めくくりとして、森永氏は「生き抜く技術」の核心について語っています。

それは、変化を恐れず、常に学び続ける姿勢です。

また、経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさも大切にするバランス感覚の重要性も強調されています。

本書は単なる処世術ではなく、時代の変化を捉え、自分らしく生きるための指針を示しています。

森永氏70年の人生から紡ぎ出された31のメッセージは、年齢や職業を問わず、多くの人の心に響く内容となっています。

本書のポイント

本書の最大の特徴は、理想論ではなく現実的な視点から書かれていることです。

年収300万円時代という厳しい現実を前提としながらも、工夫次第で豊かな人生を送れるという希望的なメッセージが込められています。

経済的不安を抱える多くの現代人にとって、本書は単なる読み物ではなく、実際の人生設計に活用できる実用的なガイドブックとして機能するでしょう。

森永卓郎氏の集大成として、長く手元に置いて参照したい一冊です。