戸田大介氏は、世界最大級のオンライン学習プラットフォーム「Udemy」日本法人の代表取締役社長です。
本書は、Udemyに蓄積された200万人以上の学習データを分析し、なぜ人は挫折するのか、どうすれば継続できるのかを科学的に解明した一冊です。
著者自身の経験と膨大なデータに基づく洞察から、「継続」という難題に対する具体的な解決策を提示しています。
単なる精神論ではなく、データに裏打ちされた実践的な方法論が詰まっています。
挫折の科学:なぜ人は続けられないのか
挫折する人の共通パターン
本書によると、Udemyの学習データから、全受講者の約30%が最初の一歩で挫折していることが明らかになっています。
多くの人が「三日坊主」と自嘲しますが、実はそれには科学的な理由があるのです。
- 目標が大きすぎる
- 成果が見えにくい
- 環境の影響を軽視している
- 「やる気」に依存しすぎている
特に注目すべきは、多くの人が「意志の力」だけで継続しようとする点です。
しかしデータによれば、意志の力は有限であり、それに頼る戦略は失敗しやすいということが示されています。
「モチベーション神話」の真実
著者は「モチベーション神話」という概念を提示しています。
これは「やる気さえあれば続けられる」という広く信じられている誤解です。
実際のデータによれば、モチベーションは波があり、最初の高揚感は必ず下がります。
成功者はモチベーションが低いときでも続けられる仕組みを持っていることがわかっています。
継続の科学:データが示す成功の法則
小さな一歩の力
Udemyのデータ分析によると、継続できる人の91%は目標を小さく分解しています。
著者はこれを「マイクロステップ」と名付けています。
- 5分だけ勉強する
- 1ページだけ読む
- 階段を1フロア分だけ使う
このような小さな行動は達成感を得やすく、次の行動へとつながりやすいのです。
特に「5分ルール」は効果的で、「たった5分だけやる」と決めることで、多くの場合それ以上続けられることが示されています。
習慣化のメカニズム
本書では、習慣化のプロセスが詳細に解説されています。
新しい習慣が定着するまでには平均66日かかるというデータが紹介されています。
この循環を意識的に設計することで、習慣化の確率が3.2倍高まるというデータも示されています。
環境デザイン:継続を支える仕組み作り
選択アーキテクチャの設計
著者は環境デザインの重要性を強調しています。
Udemyのデータによれば、環境を最適化した学習者は、そうでない人と比べて継続率が2.5倍高いことがわかっています。
- 誘惑を物理的に排除する
- 障壁を徹底的に下げる
- 視覚的なリマインダーを設置する
- 「もし〜したら、〜する」プランを立てる
ソーシャルサポートの活用
データによれば、誰かと一緒に学ぶ人は、一人で学ぶ人より78%継続率が高いことが示されています。
著者はこれを「アカウンタビリティ効果」と呼んでいます。具体的には:
- 学習仲間を見つける
- 進捗を公開する
- 教えることで学ぶ
- コミュニティに参加する
これらの方法は継続率を大幅に向上させることが実証されています。
失敗からの回復:リカバリー戦略
「完璧主義の罠」を避ける
本書の分析によれば、最も継続できる人は失敗したときの回復が早いことがわかっています。
完璧を求めるのではなく、「失敗しても復帰する技術」を持つことが重要です。
データによれば、継続に成功している人の86%は「オールオアナッシング思考」を持っていないとされています。
「2日ルール」の効果
著者は「2日ルール」を提唱しています。
これは「連続して2日以上抜けない」というシンプルな原則です。
このルールを適用した人は継続率が67%向上したというデータが示されています。
本書のポイント
本書「200万人の「挫折」と「成功」のデータからわかった 継続する技術」の核心は、継続は「意志力」ではなく「システム」によって実現されるという点です。
- 小さな一歩から始める「マイクロステップ」の力
- 習慣化のメカニズムを理解し活用する
- 環境を最適化して無意識の選択を味方につける
- ソーシャルサポートを積極的に活用する
- 完璧を求めず、失敗からの回復力を高める
本書は「なぜできないのか」という問いから「どうすればできるのか」という解決策へと読者を導きます。
200万人のデータから導き出された継続の科学は、仕事、学習、健康など、あらゆる分野で応用可能です。
意志力に頼るのではなく、科学的アプローチで継続する技術を身につけたい全ての人におすすめの一冊です。