奥田弘美氏は精神科医・産業医として約30年間のキャリアを持つ専門家です。
現在も首都圏クリニックでの診療と約15か所の企業で産業医を務めています。
著作は20冊以上に及ぶメンタルヘルスの権威です。
病気とは診断されないものの、心身が限界ギリギリの状態で過ごしている現代人への処方箋として注目されています。
過緊張状態とは何か
現代人を襲う新たな症状
本書でいう「過緊張状態」とは、ストレスが続いたことで自律神経が限界ギリギリになっている状態を指します。
まだ明確な病気ではないものの、このまま続けば本格的に体調を崩すリスクを抱えた状態です。
奥田氏は、現代人が日常的に「交感神経優位=戦闘モード」の状態で過ごしていることを指摘します。
この状態が続くことで、脳と身体がリラックスするタイミングを失ってしまうのです。
- いつも仕事が頭から離れない
- 気が休まらない状態が続く
- 入眠困難や中途覚醒
- 熟睡感の欠如
- 慢性的な疲労感
統計データが示す深刻な現状
睡眠問題の実態
厚生労働省の調査によると、20代から50代の働く世代のうち、約4割が「睡眠の質に満足していない」と感じています。
特に「入眠困難」「中途覚醒」「熟睡感の欠如」を訴える人が急増しています。
ストレス要因の変化
厚生労働省の2024年厚生労働白書では、心身の健康に関する調査で最大のリスクとして「ストレス」を挙げた割合は15.6%となり、20年間で3倍に増加しました。
若い世代ほど「こころの不調」を身近に感じる傾向が強くなっています。
2023年労働安全衛生調査では、現在の仕事や職業生活に関することで「強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は82.7%に達しています。
過緊張の根本原因を探る
現代社会の構造的問題
仕事のプレッシャー、スマートフォンの刺激、人間関係の摩擦——それらが心身を「緊張しっぱなし」にさせています。
24時間常に情報にさらされ、オンとオフの境界があいまいになった現代人特有の問題です。
自律神経システムの破綻
従来のストレス対処法では解決できない理由として、奥田氏は自律神経の仕組みに着目します。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、常に戦闘モードから抜け出せない状態が慢性化しているのです。
科学的アプローチによる解決策
朝の自律神経ケア
本書では「朝に行うべき自律神経ケア」について具体的な方法が紹介されています。
1日の始まりに自律神経を整えることで、過緊張状態を予防できるとされています。
- 朝の自律神経リセット法
- 日中の緊張コントロール技術
- 夜のリラックス導入法
- スマートフォンとの適切な距離の取り方
- 人間関係のストレス軽減法
読者の反響と実用性
体験者の声
読者からは「思い当たるフシがある」との声が多く寄せられています。
特に働き盛りの世代から高い共感を得ており、実際に症状改善を実感する読者も少なくありません。
5-2. 実践のしやすさ
書評では「日本人全員に忍び寄る『過緊張』をケアする術を知りたい方はご一読ください」と推奨されています。
専門的な内容でありながら、一般読者にも理解しやすい構成となっています。
本書の意義と価値
新しい視点の提供
単なるストレス対処法ではなく、現代人特有の「過緊張状態」という新しい概念を提示した点が革新的です。
これまで見過ごされてきた未病状態に光を当て、予防医学的なアプローチを提供しています。
専門性と実用性の両立
精神科医・産業医としての豊富な臨床経験に基づく専門知識と、一般読者が実践できる具体的な方法論を両立させた点が評価されています。
まとめ
『それ、すべて過緊張です。』は、現代人が直面する新たな健康問題に対する実践的な解決書です。
- 働く世代の40%が睡眠に不満
- ストレスリスクは20年で3倍増
- 労働者の82.7%が職場ストレスを実感
専門医による科学的根拠と実践的解決法により、多忙な日常の中でも取り組める具体的な改善策を提供しています。
心身の不調を感じる前に予防的に取り組める内容として、幅広い読者層におすすめできる良書です。
病気ではないが危険な「過緊張状態」の存在
厚生労働省データに基づく現状の深刻さ
自律神経システムに着目した科学的アプローチ
朝・日中・夜の段階的なケア方法
現代社会に適応した実践的な対処法