生産性向上・時間管理

仕事のできる人がやっている減らす習慣

中村一也氏は1986年京都府生まれのデータサイエンティストです。

京都大学経済学部卒業後、金融機関に勤務し、主としてデータ分析業務を担当。

専門はデータドリブンによる生産性の向上で、現在はデータサイエンス教育総合研究所、京都精華大学、大阪大谷大学で研究員・講師を務めています。

2024年10月23日に刊行された本書は、データサイエンティストが教える科学的に時間と余裕を生み出す仕事のコツを解説した一冊です。

効率化や生産性向上が叫ばれる昨今において、「仕事が速い」より大事な「減らす」という思考法を提唱しています。

現代のビジネスパーソンが直面する「忙しさ」の本質的な解決策を、科学的根拠に基づいて示した実践的な指南書となっています。

著:中村一也
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データが示す現代の労働環境の真実

日本人の労働時間の実態

厚生労働省の調査では、2012年の月当たり労働時間は147.0時間であり、それ以降毎年労働時間は減り続け、2020年では135.2時間となっているという事実があります。

さらに驚くべきことに、OECD(経済協力開発機構)の調査では、イタリア人の平均労働時間は1694時間である一方、日本人は1607時間にとどまっているのです。

このデータは、多くの人が抱く「日本人は長時間働いている」という印象とは異なります。

日本人は、海外と比較しても、労働時間が長いわけではないが、多くの人が「忙しくて自分の時間がない」と感じているのが現実です。

忙しさの真の原因

著者は忙しさの原因として「やることの多さ」に着目しています。

特にスマートフォンとチャットツールが世代を超えて広く普及したことで、私たちのコミュニケーション量は以前よりも激増していると指摘しています。

労働時間は減っているにもかかわらず忙しさを感じる背景には、このような構造的な変化があるのです。

「効率化」の限界と「減らす」思考の重要性

効率化神話の落とし穴

仕事をどれだけ速くできるようになっても、仕事は終わらないという現実を著者は金融機関時代に実感しました。

なぜなら"その仕事"が終わったとしても、その先には"次の仕事"が待っているからです。

パソコンは最強の「効率化」ツールだ。それなのに私たちは相変わらず忙しく、むしろやることは増えるばかりだという状況が示すように、効率化と労働時間短縮は必ずしも連動しません。

パラダイムシフトの必要性

そこで重要なのは、「仕事を速くする」ではなく、「仕事を減らす」という観点を持つことです。

時間管理力よりも仕事の効率化よりも大事なのは「やることを減らす」ということなのです。

科学的根拠に基づく「時間の価値」

幸福度と自由時間の関係

本書では興味深い研究データが紹介されています。ある大学の研究によると、一日の自由時間が2時間までは幸福度が上がり、2時間から5時間で幸福度は横ばいとなり、5時間を超えると幸福度は低下していくとのことです。

決断疲れの科学

生産性の高い一日を送るためには、決断の回数も少ないほうが良いと著者は述べています。

疲れない生活を送るためには、「今日の朝はコーヒーと紅茶と緑茶と麦茶と牛乳のどれを飲もうかな?」と考えてはいけないのです。

実践的な「減らす」技術

タスク管理の新基準

1日にやるべきタスクは6つに絞るという具体的な指針が示されています。

これは単なる経験則ではなく、認知負荷理論に基づいた科学的なアプローチです。

実践的な「減らす」技術
  • 思考のムダを減らす方法
  • 作業のムダを減らす技術
  • 自分のターンを減らす工夫
  • メールコミュニケーションの最適化
  • ミス防止の科学的手法

選択肢を減らすことの重要性

私たちにとっては、「やるべきことを減らす」だけでなく、モノや選択肢を減らすことも同時に重要だと強調されています。

これは決断疲れを避け、本当に重要なことに集中するための戦略です。

持続可能な働き方の構築

科学的なアプローチの価値

本書はタスクに優先順位をつけ、業務を効率化し、自己管理能力を高めることで誰でも「減らす習慣」を身につけ、仕事の成果を最大化できると教えてくれます。

単なる精神論ではなく、データに基づいた実践可能な方法論が提示されているのが特徴です。

長期的な視点での成果

大きな仕事を成し遂げるためには、「時間的余裕」が必要だということが科学的に証明されています。

短期的な効率化よりも、長期的な持続可能性を重視することの重要性が示されています。

著:中村一也
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まとめ

本書『仕事のできる人がやっている減らす習慣』は、現代のビジネスパーソンが直面する根本的な問題に対する革新的なソリューションを提示しています。

無駄を排除し、本質に集中することで時間とエネルギーを最適化するというアプローチは、単なる時間管理術を超えた人生戦略と言えるでしょう。

データに基づいた科学的なアプローチ実践可能な具体的手法、そして__長期的視点での成果創出__という三つの要素が組み合わさることで、読者は確実に自分の時間を取り戻すことができるはずです。

本書のポイント
  • 労働時間は減っているのに忙しさを感じる現代の矛盾を解明
  • 効率化ではなく「減らす」思考への転換の重要性
  • 科学的根拠に基づく1日6つのタスク管理法
  • 幸福度を最大化する2〜5時間の自由時間確保術
  • 決断疲れを避けるための選択肢削減戦略

働き方改革が叫ばれる現代において、本書が提示する「減らす習慣」は、真の意味での生産性向上と人生の質の改善を実現するための必読書と言えるでしょう。