堀埜一成氏は、1957年富山県生まれの経営者です。
京都大学農学部を経て1981年に味の素に入社し、19年間勤務しました。2000年にサイゼリヤに転職し、2009年から2022年まで13年間社長を務めました。
本書は、彼がサイゼリヤを国内外1500店舗以上に育て上げた経営術を余すことなく語った一冊です。
外食産業の常識を覆す「理系発想の合理的経営術」が詰まっています。
カリスマ創業者から受け継いだ重責と新戦略
プレジデントブルーからの脱却
2009年1月初めに創業者の正垣会長から「4月から社長をやれ」と告げられた堀埜氏は、その重責から「プレジデントブルー」に陥ったといいます。
しかし、正垣会長から「会社潰してもいいんだぞ」と言われ、「失敗しても自分が辞めればいい」と考えることで社長業を心から楽しめるようになりました。
外様社長としての革新
「おまえ、4月から社長な」というカリスマ創業者からの指名を受けた生産技術者の堀埜氏は、外食控え、人手不足、原価高といった外食産業の逆風の中で、独自の「外様」社長として様々な改革を実行しました。
- 広告費は原価に回せ
- ライバルは見ない、見るのはお客さまだけ
- 「当たり前品質」を当たり前に提供する
- キッチンスペースを半分にして利益率改善
- 二流の立地で安く始める中国出店戦略
ミラノ風ドリアに込められた経営哲学
300円台を維持する驚異の価格戦略
サイゼリヤの看板商品「ミラノ風ドリア」は、300円台という価格を維持し続けています。
この価格を実現するポイントは、広告費を削減し、その分を原価に回すことです。
これは従来の外食業界の常識を覆す発想でした。

顧客第一主義の徹底
堀埜氏の経営哲学には、ライバル企業を見るのではなく、常にお客さまを見つめる姿勢が貫かれています。
この姿勢が、安くて美味しい料理を提供し続ける原動力となっています。

従業員ファーストの組織運営
社員を3種類に分ける仕組み
堀埜氏は「仕組みをつくれば給与は増える、例えば社員を3種類にすればいい」と語っています。
この発想は、日本の給与水準向上に対する独自の解決策として注目されています。
農業から組織づくりまでの一貫性
堀埜氏は野菜づくりから組織づくりまで、一貫した理系発想の合理的経営術を実践しました。
これにより、サイゼリヤの品質と価格の両立を実現し、従業員の働きやすさも向上させました。
国内外1500店舗への拡大戦略
中国出店の成功の秘訣
堀埜氏は「二流の立地で安く始める中国出店戦略」を展開し、サイゼリヤの海外展開を成功に導きました。
この戦略は、リスクを最小限に抑えながら確実な成長を実現する手法として評価されています。
キッチンスペース半減による効率化
キッチンスペースを半分にして利益率改善を図るという革新的な取り組みは、限られたスペースでの効率的な店舗運営を可能にし、収益性の向上に大きく貢献しました。
- 国内、海外を合わせて1500店舗を超える規模に成長
- 年間客数2億人を実現
- 13年間の社長在任期間中に急速拡大を達成
コロナ禍に揺るがない経営基盤の構築
危機に強い組織づくり
堀埜氏はサイゼリヤを2020年以降のコロナ禍でも揺るぎない経営基盤をつくりあげました。
この実績は、彼の経営術が単なる好況時の成功ではなく、危機に強い持続可能な経営システムであることを証明しています。
当たり前品質への徹底したこだわり
「当たり前品質」を当たり前に提供するという理念は、どのような状況下でも顧客に安定したサービスを提供し続ける基盤となりました。
図々しさという武器
マウントを取る相手への対処法
堀埜氏は商談でマウントを取る相手に対して「しめしめ」と思ったというエピソードを紹介しており、この「図々しさ」が成功の鍵の一つだったと語っています。
限界を破壊するマインドセット
「仕事を変えた直後はいつもすごく嫌だが、しばらく経つと今やっていることが一番楽しいと思えてくる。
必ずそういうポジティブな気持ちになっていく」という堀埜氏の考え方は、変化を恐れずに挑戦し続ける経営者の心構えを示しています。
本書が教える経営の本質
堀埜氏の13年間の社長経験から生まれた実践的な経営術は、読者に新たな視点を与え、ビジネスの成功へのヒントを豊富に提供しています。
サイゼリヤを経営していた13年間を総括し、成功の舞台裏を余すことなく語り下ろした本書は、経営者を目指す人にとって必読の一冊といえるでしょう。
理系発想による合理的な経営判断
顧客第一主義の徹底
従業員ファーストの組織運営
広告費を原価に回す逆転発想
図々しさという成功への武器
危機に強い持続可能な経営システム