著者の武神健之氏は、医学博士・日本医師会認定産業医として活動しています。
年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施し、ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、フォルクスワーゲングループ、BMWグループなど大手外資系企業を中心に産業医として従事しています。
一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事として、働く人の心と体の健康管理をサポートしています。
本書は、メンタル不調による休職を考える人に向けた実践的な指南書です。
メンタル不調にならないための本ではありません。
不調になっても、安心して「休む」選択肢をとれるようになるための本ですと著者が明確に述べているように、休職をタブー視するのではなく、適切な休職こそが未来のキャリアを守る選択であることを伝えています。
実践的な知識と制度理解
メンタル不調への対処法
第1章では「こころと身体のSOSに気づく」をテーマに展開されます。
具体的な内容として以下が挙げられています。
- メンタルヘルス不調への治療法と特徴
- 「いい医者」の見つけ方
- 社内のキャリアに傷はつくのか
- お金の問題はどうしたらいいのか
眠れない。考えがまとまらない。なぜか涙がでる。
常に不安があるといった症状を具体的に挙げ、読者が自身の状況を客観視できるよう配慮されています。
制度活用への不安解消
多くの人が抱く「会社に迷惑をかけたくない」という思いに対し、制度を適切に利用することの重要性を解説しています。
- 身体症状:睡眠障害、思考力低下、涙が出る
- 心理症状:常時不安感
- 判断ポイント:医療機関受診、会社への報告
休職前半の過ごし方
休職初期の重要な考え方
第2章「休職前半 じっくり休む+好きなことをする」では、休職開始時の心構えを詳述しています。
- 産業医が重要視する5種類の診断書
- 休職開始時にしてもいいこと、いけないこと
- 回復期の過ごし方
- 「好きなこと」を見つけるワーク
効果的な回復プロセス
本章では、ただ休むだけでなく積極的な回復活動の重要性を説いています。
「好きなこと」を見つけるワークは、自己理解を深めながら回復を促進する実践的手法です。
復職準備と実践
復職への段階的アプローチ
第3章「休職後半 焦らずに復職の準備。そして復職へ」では、復職に向けた具体的な準備を解説しています。
特に注目すべきは復職に向けた9つの判断基準です。
この基準により、復職の適切なタイミングを客観的に判断できます。
- 復職準備期の過ごし方
- 復職する前に知っておくべき会社との関わり方
持続可能な働き方への転換
本章では、単なる復職ではなく健やかに働き続けるための心得が示されています。
復職後の再発防止も視野に入れた実践的アドバイスが含まれています。

産業医視点の専門性
豊富な実務経験に基づく知見
著者の年間1000件以上、通算1万件以上の面談という圧倒的な実績が本書の信頼性を支えています。
特に外資系企業を中心に二十数社のクライアントを持ちという幅広い業界経験により、多様な職場環境での事例が反映されています。
医学的根拠に基づく実践的指導
産業医としての医学的専門性と、実際の企業現場での豊富な経験が組み合わされた独自の視点が本書の特徴です。
理論だけでなく現場で使える実践的なアドバイスが随所に散りばめられています。
本書の社会的意義
働き方改革時代への対応
働き方改革が叫ばれ企業の健康経営がより求められる中、本書は時代のニーズに応える内容となっています。
メンタルヘルス問題を個人の問題として捉えるのではなく、組織全体で取り組むべき課題として位置づけています。
読者への実践的価値
本書の最大の価値は、休職を「キャリアの終わり」ではなく「未来への投資」として捉え直す視点の転換です。
適切な「休職」は、むしろあなたの未来のキャリアを守る選択なのですという明確なメッセージが、読者の不安を希望に変える力を持っています。
まとめ
本書は、メンタル不調に悩む全ての働く人にとって、不安を安心に変える実践的なバイブルとなるでしょう。
著者の豊富な経験に裏打ちされた確かな内容により、読者は自信を持って適切な選択ができるようになります。
- 実践性の高さ:[知識][情報][心得]を3つの章で具体的に、事例と共に紹介
- 専門性の確かさ:年間1000件超の面談実績を持つ産業医による執筆
- 視点の革新性:休職を前向きなキャリア戦略として捉える発想転換
- 包括的なサポート:休職前の判断から復職後の働き方まで一貫した指導
- 制度理解の促進:診断書の種類や復職判断基準など実務的な知識の提供