吉田満梨氏は神戸大学大学院経営学研究科准教授で、マーケティング論を専門とし、特に新市場の形成プロセスの分析に関心を持つ研究者です。
中村龍太氏は1964年広島県生まれの経営学者です。本書は世界的経営学者サラス・サラスバシー教授によって体系立てられた優れた起業家の思考法「エフェクチュエーション」の日本初の入門書として2023年8月にダイヤモンド社から出版されました。
不確実性の高まる社会で有用な「反・因果論」の行動様式を、エフェクチュエーションの5つの原則とともに詳細に解説し、個人・企業内での活用法のヒントも紹介しています。

エフェクチュエーション理論の核心
熟達した起業家の思考パターン
エフェクチュエーションは、インド人経営学者サラス・サラスバシー氏が提唱した、卓越した起業家に共通する意思決定プロセスや思考方法を体系化した市場創造の実行理論です。
多くの成功した起業家を観察・分析することによって、彼らの思考・行動様式が従来のビジネス・スクールで教えられていた伝統的なビジネス・プランニングの公式や定石とは著しく異なることが明らかになりました。
これまでの経営学が重視してきたコーゼーション(因果論)とは対照的に、エフェクチュエーションは不確実性の中での新しいアプローチを提示しています。
従来の計画主導型とは異なる思考法が、現代の変化の激しいビジネス環境で注目される理由がここにあります。
理論の背景と発見プロセス
サラスバシーによる熟達した起業家に対する意思決定実験から、起業家的方法が発見されました。
実証的な研究に基づいて構築された理論であることが、この概念の信頼性を高めています。
5つの原則の実践的活用
手中の鳥の原則とその効果
5つの原則は「手中の鳥」「許容可能な損失」「レモネード」「クレイジーキルト」「飛行機のパイロット」で構成されます。
「あなたが手にしている1羽の鳥は、姿の見えない2羽の鳥よりも価値がある」という諺が示すように、手持ちの資源から始める重要性が説かれています。
- 手中の鳥の原則:現在持っている資源から出発する
- 許容可能な損失の原則:失っても大丈夫な範囲で行動する
- レモネードの原則:予期しない出来事を機会に変える
- クレイジーキルトの原則:多様なステークホルダーとの協力
- 飛行機のパイロットの原則:環境をコントロールしようとする
「できない」理由への新しい視点
「できない」理由に対する見方を変えることで、新たな事業機会が生まれます。
従来の障害を機会として捉え直す発想の転換が、イノベーションの源泉となります。
事業機会の創造と発見
二つのアプローチの統合
発見される事業機会と創造される事業機会という2つの見方が可能にする異なるアプローチが示されています。
市場に既に存在する機会を見つけるだけでなく、新たな機会を創り出すプロセスが重要です。

企業内での実践方法
単に起業家だけでなく、企業内で新製品開発や新規事業立ち上げに携わる人々にとっても有益な知見を提供しています。
既存企業の中でも、この思考法を活用することで新しい価値創造が可能になります。
現代ビジネスへの応用と意義
不確実性時代の必須スキル
現代のビジネス環境は予測困難な変化に満ちています。
従来の戦略論では対応しきれない状況で、エフェクチュエーションの思考法が威力を発揮します。
クリティカル・ビジネスの実践に有用な洞察を与えてくれる理論として注目されています。
新しいパラダイムでのビジネス実践に必要な方法論として位置づけられます。
フリーランスと企業内マネジメント
本書では個人のフリーランス活動から企業内でのマネジメントまで、幅広い適用範囲が示されています。
現代の多様な働き方に対応した実践的な指南書としての価値があります。

本書のポイント
本書は以下の点で読者にとって価値ある一冊です:
- 実証的基盤:豊富な起業家研究に基づく信頼性の高い理論
- 実践的応用:個人から企業まで幅広い活用可能性
- 日本初の入門書:複雑な理論をわかりやすく解説
- 現代的意義:不確実性の高い時代に必要な思考法
- 具体的手法:5つの原則による体系的なアプローチ
変化の激しい現代において、従来の計画重視の経営手法では限界があります。
エフェクチュエーションの思考法を身につけることで、不確実性を味方につけ、新しい価値を創造する力を養うことができるでしょう。
起業を志す人はもちろん、既存企業で新規事業に携わる全ての人にとって必読の書です。
- 実証的基盤
- 豊富な起業家研究に基づく信頼性の高い理論
- 実践的応用
- 個人から企業まで幅広い活用可能性
- 日本初の入門書
- 複雑な理論をわかりやすく解説
- 現代的意義
- 不確実性の高い時代に必要な思考法
- 具体的手法
- 5つの原則による体系的なアプローチ