ピーター・ゼイハン氏は1973年生まれの地政学ストラテジストで、在オーストラリア米国務省、民間諜報会社ストラトフォーのバイス・プレジデントなどを経て、2012年に自身のコンサルティング会社ゼイハン・オン・ジオポリティックスを設立しました。
影のCIAとも呼ばれる情報機関ストラトフォーに12年間勤務し、分析部門のバイス・プレジデントまで上り詰めた経歴を持ちます。
本書は第二次世界大戦終結後、ずっと米国が主導してきた「秩序」、すなわちグローバル化した「世界の終わり」が近づいているという分析に基づき、野蛮化する経済の悲劇を豊富なデータとともに詳細に描いた衝撃作です。
上下巻合わせて、全米を激しく揺さぶった超話題作として注目を集めています。

グローバル化終焉の現実
黄金時代の終わり
過去数十年間の世界は、私たちが生きている間に経験できるであろう最高の世界だったとゼイハン氏は分析します。
しかし、これからは、安価で質がよく迅速な世界から、高価で質が悪くのろい世界へと急速に移行していくと警告しています。
この変化の根本原因は明確です。
この私たちの世界がばらばらになって崩壊しつつあるからであり、米国が脱グローバル化に舵を切ることで、戦後秩序が終焉を迎えるためです。
野蛮化する無秩序の時代
無秩序の時代には、経済も政治も、文明そのものも野蛮化していくという厳しい現実が待ち受けています。
特に深刻なのは、世界中で人口が減少し、高齢化していくなかで軌道修正も困難だという点です。

エネルギーと工業の未来
グリーン・テクノロジーの限界
本書下巻では、現実的なエネルギー分析が展開されます。
グリーン・テクノロジーでは未来を支えられない、その理由が詳細に検証されています。
理想論ではなく、データに基づいた冷静な分析により、エネルギー転換の困難さが明らかにされます。
特に工業用原材料の調達問題は深刻で、製造業全体に影響を与える可能性があります。
製造業の地殻変動
第4部 エネルギー 第5部 工業用原材料 第6部 製造業 第7部 農業という構成で、経済の基盤となる各分野の分析が行われています。
製造業においては、サプライチェーンの分断により、これまでの効率重視から安全保障重視への転換が避けられません。
食糧安全保障と覇権の行方
日本の食糧危機対策
日本が食糧危機から逃れるために、すべきことについて具体的な提案がなされています。
島国である日本の地理的特性を踏まえた現実的な戦略が必要です。
食糧安全保障は単なる農業問題ではありません。
地政学的な観点から、長期的な国家戦略として捉える必要があります。
新たな覇権国の可能性
「アメリカの世紀」のあと、覇権を握る国はどこなのかという重要な問いに対する分析も含まれています。
米国の影響力低下後の世界秩序について、地理的条件、人口動態、エネルギー資源などの要素から検証されています。
データが示す未来予測
豊富な統計資料
地政学ストラテジストが無慈悲な未来を豊富なデータともに仔細に描いているのが本書の特徴です。
感情論ではなく、客観的なデータに基づいた分析が説得力を持ちます。
人口統計、エネルギー消費量、貿易データなど、多角的な視点からの検証により、予測の精度が高められています。
メディアからの注目
ウォール・ストリート・ジャーナル、フォーブス、ブルームバーグ、APなど、多数のメディアが彼の分析に注目しているという事実が、分析の信頼性を物語っています。
実際の政策決定者や投資家からも高い評価を受けており、実用性の高い内容となっています。
- 地理的優位性の活用
- エネルギー自立の重要性
- 食糧安全保障の確保
- 技術革新による競争力維持
- 地域連携の強化
まとめ
本書の価値は、楽観的な未来予測ではなく、厳しい現実を直視した分析にあります。
- データ重視の分析:
- 豊富なデータともに仔細に描かれた客観的な予測
- 実務経験に基づく洞察:
- 企業、金融機関から米軍まで、幅広い分野のクライアントを抱えるコンサルタントとしての実績
- 包括的な視点:
- エネルギー、製造業、農業、地政学を統合した全体像の提示
- 現実的な対応策:
- 理想論ではなく実現可能な戦略の提案
驚きの未来像に備えるためには、まず現実を正確に把握することが不可欠です。
変化の時代を生き抜くための必読書といえるでしょう。
