細谷功氏は1964年神奈川県鎌倉市出身のビジネスコンサルタント・著述家で、東京大学工学部卒業後、東芝で原子力技術者として約8年間勤務し、その後コンサルティング業界に転身した経歴を持ちます。
『地頭力を鍛える』などの著作で知られる思考力の第一人者として、問題解決や思考法に関する講演やセミナーを国内外で実施しています。
本書は抽象化と具体化という形で具体と抽象を行き来する思考法について解説し、29の問題を通してトレーニングできる実践的な一冊です。
この思考法は汎用性が高く、特に「問題解決」と「コミュニケーション」の分野で有効とされています。

具体⇔抽象思考の核心
思考の往復運動が生む力
「具体⇔抽象」とは、抽象化と具体化という形で具体と抽象を行き来する思考法です。この思考回路を身につけることで、知的能力が劇的に進化します。
単に抽象的に考えるだけでも、具体的に考えるだけでもありません。
両者を自在に行き来することで、新たな発想や深い理解が生まれます。
日常に潜む思考の壁
多くの人は無意識のうちに、具体的思考か抽象的思考のどちらかに偏りがちです。
この偏りが、創造性の欠如やコミュニケーションの断絶を招いています。

29問の実践トレーニング
多様な問題形式による能力開発
本書には29の練習問題が収録されています。
これらの問題は段階的に難易度が上がり、読者の思考力を体系的に鍛えます。
「目覚まし時計」「懐中電灯」「旅行代理店」「カメラ」「お金」の共通点を見つける問題や、「自動車の座席」と「年末に配られるカレンダー」の共通点を探る問題など、一見無関係に見える事物の関連性を発見する力を養います。
思考プロセスの可視化
各問題には詳細な解説が付いています。
単に答えを示すだけでなく、思考のプロセスを段階的に説明しているため、読者は自分の思考パターンを客観視できます。
- 表面的な特徴にとらわれない
- 機能や役割に着目する
- 複数の抽象化レベルを試す
- 意外な共通点を探る
ビジネス現場での応用力
発想力の飛躍的向上
斬新な発想をできるようになるだけでなく、無用な軋轢やコミュニケーションギャップの解消にも役立ちます。
抽象化により既存の枠組みを超えた発想が可能になり、具体化により実現可能な形に落とし込めます。
コミュニケーション力の強化
具体⇔抽象思考は、相手の理解レベルに合わせた説明を可能にします。
専門用語を使いすぎて伝わらない、逆に具体例ばかりで本質が見えないといった問題を解決できます。
- 企画提案時の論理構築
- 部下への指導・教育
- 顧客との折衝・説明
- チーム内での意思疎通
実生活での思考革命
問題解決能力の向上
日常生活の様々な場面で、具体⇔抽象思考が威力を発揮します。
複雑な問題を抽象化して本質を見抜き、具体的な解決策に落とし込む能力が身につきます。
学習効率の大幅改善
新しい知識や技能を習得する際も、この思考法が有効です。
個別の事例から一般原則を抽出し、他の分野に応用する力が格段に向上します。

まとめ
本書の最大の価値は、思考力を具体的に鍛えられる実践性にあります。
- 体系的な学習設計:29問の段階的構成により、無理なくスキルアップできる
- 実用性の高さ:ビジネスから日常生活まで幅広く応用可能
- 思考プロセスの明確化:解説により自分の思考パターンを客観視できる
- 継続的な成長:繰り返し取り組むことで思考の柔軟性が向上する
思考力を根本から変革したい人、創造性を高めたい人、コミュニケーション能力を向上させたい人にとって、必読の一冊です。
読んだ後には、物事を見る視点が明らかに変わっているはずです。
