尾石晴(おいし・はる)氏は外資系メーカーに16年勤務した後、独立して活動を続ける2児の母です。
本書は著者が自費出版したKindle書籍『サバティカルタイム 「40歳の壁」を越える戦略的休暇のすすめ ~FIREではなく働き続ける生き方~』に大幅に加筆修正を加えて新たに出版されたものです。
40代に差し掛かり、これまでの人生設計に迷いを感じている方に向けて、「お金・つながり・健康」の3つの要素を満たし続けるための戦略的なキャリアデザインを提案しています。
本書は単なる自己啓発書ではなく、実践的なワークシートも付属した具体的な行動指針を示している点が特徴的です。

「40歳の壁」の正体と向き合い方
人生の中間地点で立ちはだかる壁
40代は人生の折り返し地点として、多くの人が立ち止まって考える時期です。
キャリアの停滞感や家庭での責任の重さ。将来への不安が重なり合います。
「揺れる40代」と表現されるこの時期には、特有の心理的な課題が存在します。
従来のキャリア論では、ひとつの会社で昇進を重ねることが成功とされてきました。
しかし現代では、その価値観だけでは行き詰まりを感じる人が増えています。
本書では、この現象を「40歳の壁」として定義し、新しいアプローチを提案しています。
壁を越えるための3つの要素
本書の核心となるのは「お金・つながり・健康」という3つの要素です。
これらを同時に満たし続けることができれば、40歳の壁をスルッと越えることができるとしています。
重要なのは、どれか一つに偏るのではなく、バランスよく維持し続けることです。
一時的な成功ではなく、持続可能な人生設計を目指す点が本書の特徴といえるでしょう。

「自分業」という新しい働き方
裁量権とやりがいを両立する仕事
40歳の壁を超えるためには、裁量権とやりがいを持つことのできる仕事=自分業を持つことが効果的だと説明されています。
自分業とは、自分が主体となって価値を提供する働き方のことです。
従来の雇用形態にとらわれず、自分の価値観や能力を活かせる領域で活動します。
必ずしも独立起業を意味するわけではありません。
会社員として働きながらでも、自分業的な要素を取り入れることは可能です。
自分業を見つけるための行動指針
自分業を探すためには以下のような行動、考えが必要だとされています。
- 自分の価値観を言語化し、他人の正解ではなく自分の正解を見つける
- 自分がどんな報酬を求めているのか(金銭なのか、信頼なのか、貢献なのかなど)
- 様々なアウトプットをして、継続できるものを探す
- 顧客を自分の付き合いたい人にする、主語を顧客ではなく、自分にする
- 自分業が顧客のどのできないの壁を取り除くことができるか考える
これらの行動指針は、段階的に実践することで効果を発揮します。
一度に全てを変える必要はありません。小さな変化から始めることが重要です。
マイキャリアの整理と設計方法
2つのワークシートによる自己分析
本書には「マイキャリア」の整理に使える2つのワークシートがダウンロード特典として付いています。
これらは「3つの要素棚卸し」と「重ね合わせ発見」というワークシートです。
3つの要素棚卸しでは、これまでの経験を「お金・つながり・健康」の観点から整理します。
重ね合わせ発見では、異なる要素が重なる部分を見つけ出し、自分業の種を発見していきます。
継続的なアウトプットの重要性
様々なアウトプットをして、継続できるものを探すことが推奨されています。
アウトプットは自分の考えを整理し、他者からのフィードバックを得る機会となります。
ブログやSNS、動画配信など、形式は問いません。重要なのは継続することです。
継続の中で、自分が本当にやりたいことや得意なことが見えてきます。

雪だるま式成長の仕組み
小さな変化が大きな力を生む
小さな変化が行動をおこし雪だるま式に力となり、壁をスルッとこえるとされています。
この雪だるま式の成長が、本書のタイトルにある「スルッと」の秘密です。
最初は小さな雪玉でも、転がし続けることで大きな雪だるまになります。
同様に、小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化を生み出すのです。
無理をして一気に変えようとする必要はありません。
持続可能な成長戦略
本書で提案される戦略の特徴は、持続可能性にあります。
一時的な成功を目指すのではなく、長期的に続けられる仕組みを作ることに重点が置かれています。
燃え尽きることなく、自分のペースで成長し続けることができれば、40歳の壁は自然と越えることができます。
この考え方は、現代の働き方改革の流れとも一致しています。
実践者の視点から見た価値
外資系企業での経験に基づく説得力
外資系メーカーに16年勤務し、長時間労働が当たり前の中で子持ち管理職を経験した著者の実体験に基づいています。
理論だけでなく、実際の経験に裏打ちされた内容となっています。
働く母親としての視点も含まれており、仕事と家庭の両立に悩む読者にとって説得力のある内容です。
机上の空論ではなく、現実的な解決策が提示されています。
読者の行動変容を促す構成
本書は読者が実際に行動を起こせるよう、段階的な構成になっています。
まず現状を把握し、次に目標を設定し、最後に具体的な行動計画を立てる流れです。
ワークシートの活用により、読書だけで終わらない実践的な学びが得られます。
「人生の後半戦をどうデザインしていくか?」を考えるきっかけとなる内容です。

本書のポイント
本書の核心は、40代という人生の転換点で立ち止まることなく、戦略的に次のステップへ進むための具体的な方法論を提示していることです。
これから40代を迎える方や、現在40代で人生の方向性に迷いを感じている方にとって、新しい視点と具体的な行動指針を与えてくれる一冊です。
FIREや早期リタイアではなく、働き続けながらも自分らしい人生を築いていきたい方に特におすすめできます。
- 3要素の同時実現:お金・つながり・健康を同時に満たす「自分業」の概念
- 実践的なツール:ダウンロード可能なワークシートによる自己分析
- 持続可能性:一時的な成功ではなく、長期的に続けられる成長戦略
- 雪だるま式アプローチ:小さな変化から大きな成果を生む仕組み
- 実体験に基づく説得力:外資系企業での16年間の経験と子育ての両立体験