鈴木賢一郎氏は2003年から2012年までIBコンサルティング部に在籍し、数多くの上場企業の買収防衛策構築やアクティビスト対策に携わり、2009年からは企業防衛の責任者を務めた経験を持ちます。
現在は株式会社IBコンサルティング代表取締役社長として活動しています。
本書は「株式を安く買って高く売る」という基本原則に忠実なアクティビスト(物言う株主)の行動原理を実例を通して読み解き、株式投資の基本を理解できる内容となっています。

コバンザメ投資戦略の核心
アクティビストの投資哲学
アクティビストは株式市場の仕組みを利用し徹底的に儲けを追求しながらも、「株式を安く買って高く売る」という基本原則に忠実な投資家です。
彼らの投資戦略は単なる短期的な利益追求ではありません。企業価値の向上を通じて長期的なリターンを狙う手法です。
本書では、このようなプロの投資家の動きに便乗する「コバンザメ投資」の手法が詳しく解説されています。
個人投資家が単独で企業分析を行うのは困難ですが、専門知識と豊富な資金を持つアクティビストの投資判断を参考にすることで、より効率的な投資が可能になります。
投資対象の選定基準
アクティビストが注目する企業には共通の特徴があります。
- 割安に評価されている企業
- 経営改善の余地が大きい企業
- 株主還元策の強化が期待できる企業
- 事業再編やスピンオフの可能性がある企業
これらの基準を理解することで、個人投資家も優良な投資機会を見つけやすくなります。
実践的な投資手法
情報収集の重要性
本書の構成は「序章 アクティビストの登場で盛り上がる『コバンザメ投資』」から始まり、「第1章 アクティビストは何を見ているか」「第2章 個別のアクティビストの特徴を見てみよう」と続きます。
これらの章では、具体的な情報収集方法と分析手法が紹介されています。

アクティビストの動向を把握するためには、以下の情報源が有効です。
- 大量保有報告書の提出状況
- 株主提案の内容と結果
- 経営陣との対話の進展状況
- メディアでの発言や公表資料
リスク管理の重要性
「第3章 上場会社の『アクティビスト対策』に備えよう」では、企業側の対応策についても言及されています。
投資家は企業の防衛策についても理解しておく必要があります。
コバンザメ投資においても、以下のリスク管理が重要です。
- 分散投資によるリスク分散
- 投資期間の設定と見直し
- 損切りラインの明確化
- 市場環境の変化への対応
市場動向との関連性
ストラテジック・バイヤーの存在
「第4章 『ストラテジック・バイヤー』の動向にも注目しよう」では、戦略的買収者の動きについても解説されています。
これらの投資家の動向を把握することで、より包括的な投資戦略を構築できます。
近年の日本株市場では、海外アクティビストの活動が活発化しています。
コーポレートガバナンス改革の流れとも相まって、株主価値向上への圧力が高まっています。
このような環境変化を理解することで、投資機会を適切に捉えることができます。
今後の展望
「終章 『コバンザメ投資』の未来」では、この投資手法の将来性について論じられています。
ESG投資の普及やデジタル化の進展など、投資環境の変化に対応した戦略の進化が期待されます。
持続可能な企業価値の創造が重視される現在、アクティビストの役割も変化しています。
短期的な利益追求から、長期的な企業価値向上への貢献が求められており、この変化を理解することが重要です。

まとめ
本書は投資の専門家である鈴木賢一郎氏の実務経験に基づいた実践的な内容となっています。
アクティビストの行動原理を実例を通して読み解くことで、目から鱗で株式投資の基本がよく理解できる構成になっています。
個人投資家が単独で行うには困難な企業分析や投資判断を、プロの投資家の動きを参考にすることで効率化できるという発想は非常に実用的です。
投資初心者から経験者まで、幅広い読者に有益な知識を提供する一冊といえるでしょう。
- アクティビストの投資哲学と手法の詳細な解説
- コバンザメ投資の具体的な実践方法
- 企業の防衛策とその対応方法
- 市場環境の変化への適応戦略
- 長期的な投資価値創造の重要性