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スタートアップの技法 新規ビジネスをスケールさせる「7つの視点」

杉田浩章氏は、早稲田大学ビジネススクール教授であり、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の元日本代表を務めた経営戦略の専門家です。

東京工業大学工学部卒業後、慶應義塾大学でMBAを取得し、JTBを経て1994年にBCGに入社しました。

2006年から2013年までBCG日本支社長、2016年から2020年まで同社日本代表を歴任し、2023年より現在はシニアアドバイザーを務めています。

本書「スタートアップの技法 新規ビジネスをスケールさせる『7つの視点』」は、2025年5月28日に日本経済新聞出版社から発売された、全348ページの経営戦略書です。

スタートアップや新規事業の成功確率を高めるための実践的なフレームワークを提供することを目的としています。

新規事業の失敗要因と成功の秘訣

多くの新規事業が失敗する理由

本書では、多くの新規事業が失敗する要因として15項目が挙げられています。これらの要因には以下のようなものが含まれます。

新規事業が失敗する理由
  • ポジショニングの不明確さ
  • ビジネスモデルの構築不足
  • 差別化戦略の欠如
  • 市場理解の不足
  • 顧客価値の軽視

「新規事業や起業は特別なアイディアやイノベーションが重要で、やってみないとわからない」という思い込みが、スケーラブルな事業や企業を創りきれない失敗の原因であると指摘されています。

再現性のあるフレームワークの重要性

BCGで数多くの事業立ち上げの支援を行い、個人としてもスタートアップに数々のアドバイスを実践してきた経験から、よくある失敗とさまざまな成功事例を分析し、再現性のあるフレームワークが提示されています。

これにより、新規事業の成功確率を体系的に向上させることが可能になります。

7つの視点で見る勝利の構造

多様な勝ちパターンの分析

本書では様々な会社の勝ちポイントが事例として紹介されています。

商品で勝つ会社もあれば、ビジネスモデルで勝つ会社もあります。

成功企業の戦略パターンを分析することで、以下のような勝利の構造が明らかになります。

成功企業の戦略パターン(勝利の構造)
  • 商品力による差別化
  • ビジネスモデルの革新性
  • 流通経路を変えてBtoBtoCと提携パートナーを作って成功している事例
  • 顧客体験の最適化
  • データ活用による競争優位

重要な3つの要素

  • 大事なことはポジショニング、ビジネスモデル、勝ち続ける仕組みであることが強調されています。

これらの要素を統合的に考えることで、持続可能な競争優位を構築できます。

スタートアップ特有の戦略論

インパクトの重要性

ベンチャーはインパクトが大事で、「あればいいな」では勝てないという指摘は特に重要です。

スタートアップは限られたリソースの中で、従来企業との差別化を図る必要があります。

そのため、顧客にとって決定的な価値を提供する必要があります。

収益化戦略の重要性

儲けどころを変えて収益化することの重要性も述べられています。

従来のビジネスモデルにとらわれず、新しい収益源を見つけることが成功の鍵となります。

実践的なアプローチ

BCGでの豊富な実績

BCGでの豊富なコンサルティング経験と、早稲田大学ビジネススクールでの教育経験を組み合わせることで、理論と実践の両方をバランス良く提供しています。

これにより、読者は具体的な行動指針を得ることができます。

事例ベースの学習

様々な企業の成功事例と失敗事例を豊富に掲載することで、読者が自社の状況に応じて応用できる知識を提供しています。

単なる理論書ではなく、実践的なガイドブックとして活用できる構成になっています。

まとめ

本書は、スタートアップや新規事業の成功確率を高めるための実践的な指南書として高く評価できます。

BCGでの豊富な経験と学術的な知見を組み合わせた杉田氏ならではの視点で、体系的かつ実用的なフレームワークを提供しています。

本書の特徴

  • 失敗要因の体系的な分析
  • 再現性のある成功フレームワークの提示
  • 豊富な事例による実践的な学習機会
  • 理論と実践のバランスの良い統合

新規事業の立ち上げを考えている起業家、既存企業の新規事業担当者、そして経営戦略に関わる全ての人にとって、実践的な価値を提供する必読の一冊といえるでしょう。