世界の一流は「休日」に何をしているのか
現代のビジネスパーソンにとって、休日の過ごし方は人生の充実度を大きく左右する重要な要素です。多くの日本人が平日の疲れを癒すために休息だけに費やしている休日を、世界のエリートたちはいかに戦略的に活用しているのか。
本書は、そんな疑問に対する明確な答えを示してくれます。
本書の著者である越川慎司氏は、元マイクロソフト業務執行役員として、PowerPointやExcelなどの事業責任者を歴任した経験を持ちます。
2005年にマイクロソフトに入社し、シアトルのMicrosoft本社でビル・ゲイツと直接仕事をし、当時CEOだったスティーブ・バルマーが朝5時代にジムでランニングをしてからバリバリ働く姿を間近で目撃した実体験を基に、本書が執筆されています。
現在は、メンバー全員が週3日勤務のクロスリバーの創業社長として活躍されています。
本書は世界水準のエリートたちの休日活用術を体系的にまとめた実践的メソッドを提示しています。
戦後から高度経済成長期にかけての日本が週6日勤務、法定労働時間が週48時間だった時代背景から、松下電気創業者松下幸之助氏が提唱した「1日休養1日教養」という考え方が現代の休日活用における重要な指針となっており、単なる休息ではなく、次の週に向けた充電タイムとしての休日の意義を示しています。
日本人の休み方に潜む問題点
労働時間の減少と疲労の矛盾
日本人の働き方に関する興味深いデータが本書で紹介されています。
2000年から2022年にかけて日本人の年間労働時間は200時間も減少し、1626時間となっており、欧州先進国に近い水準になっています。
働き方改革によって以前のような長時間労働をしている人は減少しているにも関わらず、多くの人が「疲れが抜けない」「平日の仕事に集中できない」という問題を抱えています。

日本人の休日パターンの実態
平成26年版厚生労働白書によると、日本人の休日の過ごし方のトップ3は男女ともに以下の通りです:
- 1位:なんとなくスマホを見て過ごす
- 2位:動画やテレビを見て過ごす
- 3位:何もせずゴロゴロで過ごす
このように日本のビジネスパーソンの多くは体と心を休めることに休日を費やしているのです。
しかし、だらだら過ごすだけで終わる休日は、実は逆に疲れが取れていないことが多いのです。
疲れているから休まなきゃと考えてただダラダラ過ごすだけで終わる休日は、脳がリフレッシュしておらず、メンタルも上がっていかないからです。
世界の一流との違い
一方で世界の一流は、休日を何もしない時間と捉えるのではなく、スポーツや趣味を楽しんだり友人や家族との時間を楽しむといった傾向があります。
自分で決めた休日の過ごし方を主体的に楽しむことによって自己効力感を高めているのです。
自己効力感とは「自分ならできる」といった自分の可能性を肯定的に認知できる心理状態で、この自己効力感が高まることで平日の仕事の生産性も高めることができます。
土曜と日曜の戦略的使い分け術
二つの休日として捉える発想転換
世界の一流ビジネスパーソンの最大の特徴は、土曜と日曜を戦略的に使い分けることです。多くの日本人は土曜と日曜を「仕事がない2日間の休み」「連続した休息のための休暇」として扱う傾向がありますが、世界の一流たちは土曜と日曜を独立した別々の日として捉えており、使い方を分けています。
チャレンジデーとリフレッシュデー
土曜日は「チャレンジデー」と位置づけています。
自分の趣味や家族との時間を楽しむことに加えて、新たな人間関係の構築やセミナーへの参加など新しいことに積極的に挑戦していきます。
日曜日は「リフレッシュデー」として考えています。
運動や読書、瞑想などを行うことで心身共にリフレッシュさせているのです。
世界のエリートたちの実践例
具体的な実践例として以下が挙げられています:
イーロン・マスクの場合:
- 土曜日:自分で飛行機を操縦することを趣味にしている
- 日曜日:自宅で瞑想や読書をして過ごしている
スティーブ・ジョブズの場合:
- 土曜日:ハイキングに出かけて自然の中でじっくり考える時間を持つ
- 日曜日:自宅で瞑想をして自分自身を見つめ直す時間を持つ
このようにインドアとアウトドアをうまく組み合わせることによって、世界の一流は休みの日に休養と教養を手に入れているのです。
土曜日活用の重要性
世界の一流は共通して土曜の使い方が休日の鍵を握っていると考えています。日曜日の夕方になってしまうとどうしても次の日の仕事のことが頭に浮かんできてしまい、自分の趣味や家族との時間を楽しむことができなくなってしまいます。また日曜日に激しい運動をしてしまうと翌日まで疲れが残ってしまい、月曜日の仕事に支障が出てきてしまいます。だからこそ世界の一流は土曜の使い方を特に重視しており、自分にとって大事な予定は土曜日に入れるようにしているのです。
自己効力感を高める4つの実践法
自己効力感の重要性
自己効力感とは、自分は目標を達成できるだけの能力を持っていると自分自身が認識することを指します。一言で表現すると「自分に自信を持つ」ということです。この自己効力感が低いと、仕事でネガティブ思考になったり、失敗するのが怖くて挑戦しなかったり、途中で諦めてしまったり、努力を継続できないといった問題が生じます。よく日曜日の夕方頃から「明日から仕事か」と憂鬱に感じるブルーマンデー症候群も、実は自己効力感の低さが原因なのです。
四つの向上メソッド
①簡単な目標設定による小さな達成感の蓄積
自分に自信を持つためには、一度きりの大きな目標を達成するよりも、小さな成功体験を積み重ねて脳に記憶させることが重要です。例えば「土日で気になっていた本を20ページだけ読もう」といった小さな目標を立てるのです。仮に10ページしか読めなかったとしても、「半分しか達成できなかった」と落ち込むのではなく、「目標の半分も到達できた」と自分を褒めることがポイントです。
②新しいことへのチャレンジ
自分が経験したことがないことや慣れていない分野に挑戦することで、自分の可能性を広げ、自己効力感を高めることができます。海外の一流の人々が実際に行っておすすめなのが料理です。料理は想像力に溢れ、家族や友人を喜ばせるエンターテイメントにもなります。
③人との繋がりを大切にする
海外の一流は周囲の人たちと良好な関係を築き、精神的な安定を得ることが自己効力感に大きく影響すると考えています。人間関係が良好であれば、多少職場で辛いことがあっても頑張れるものです。これは科学的に解明されており、長期的な幸福感を促すオキシトシンが分泌されているからです。
④自己省察の時間を持つ
自分の価値観や思考パターンを客観的に見つめ直し、どうすればもっと良くなるのかを考える時間を持つことです。スマホを家に置いて公園のベンチでぼーっとする時間も良いですが、おすすめはサウナです。サウナなら携帯も持ち込めず、密室で自分だけの時間が作れ、新陳代謝も良くなるのでストレス発散にもなります。
1日7分で実現する休養と教養
7分間の威力
1日たった7分という時間は、24時間のうちわずか0.5%に過ぎません。どんなに忙しいビジネスパーソンでも簡単に確保できる時間です。この7分を習慣にするだけで、メンタルも脳もリフレッシュされ、仕事の効率もアップします。
三つの7分間メソッド
①瞑想(5~7分)
ジョブズもやっていたことで、世界のビジネスパーソンの中で広まり、ビル・ゲイツもやっているリラックス法です。休日の朝か就寝前に5~7分瞑想するだけで、ストレス解消や集中力アップ、不眠解消の効果があります。
やり方は以下の通りです:
- 椅子に座った状態で背筋を伸ばす
- 目を閉じて視覚情報を遮断する
- 鼻から息を吸って、その倍の時間をかけて口から吐き出す
- ゆっくりとした呼吸を何度も繰り返す
②ジャーナリング
書く瞑想とも呼ばれ、頭に思い浮かんだことをランダムに紙に書き出すことで集中力を高める効果があります。書き出す内容に制限はなく、どんなことでも構いません。頭の中の泥水を排水するイメージで思いつくまま書くことで、自律神経が整います。
ジャーナリングの効果:
- 自分の現状を客観視できる
- 思考を整理できる
- 新しいアイデアや考え方が見つかる
- ネガティブな感情をリセットできる
- 集中力がアップする
③読書(7分間集中法)
7分という短時間でも工夫次第でインプットを増やすことは可能です。おすすめの方法として、本の「はじめに」だけを読む、本の要約サイトを閲覧する、本の解説動画を1.5倍速で見るといった方法があります。
世界のエリートたちの読書習慣
世界のエリートたちの読書習慣も参考になります:
- ビル・ゲイツ: 週に1冊、年間50冊の読書をしており、その大半がノンフィクションで、公衆衛生やエンジニアリング、歴史や科学など多岐にわたる
- イーロン・マスク: 9歳の時にブリタニカ百科事典の全巻を読破し、若い頃はSF小説に夢中になって毎日10時間を読書に費やし、1日2冊のペースで読書三昧の毎日を送っていた
- ウォーレン・バフェット: 1日5~6時間の読書時間を今でも作っており、週末のほとんどを読書に費やしている
科学的根拠に基づく休日改革
金曜日午後からの準備戦略
休日を充実した時間にするために、世界の一流は金曜日の午後3時頃から休日の準備を始めています。具体的には以下の3つのことをしています:
- 土日の過ごし方を事前に計画する
- 金曜の午後に翌週のタスクを整理する
- 金曜の夕方に予定を入れる
日本のビジネスパーソンの多くは金曜日の夕方にそれまでの遅れを取り返そうとラストスパートをかける傾向がありますが、その働き方では心身共に疲れ果ててしまい、休日はダラダラしてしまうようになってしまいます。そのため世界の一流は金曜の夕方にジムに行ったり友人に会うなど休日の予定を前倒しにしているのです。
ワークライフハーモニーの実現
よくワークライフバランスという言葉を聞きますが、世界の一流は共通して両者を切り離して考えるのではなく、両者をうまく統合して調和させるワークライフハーモニーの実現を重要視しています。彼らは仕事が個人の成長を促し、個人の生活が仕事のパフォーマンス向上に役立つと考えているのです。
ワークライフハーモニーを実現するために世界の一流がやっていることとして以下の5つが挙げられています:
- 休日と仕事を切り離す
- エネルギーを再充電して想像性や集中力を高める
- デジタルデトックスの時間を作る
- 健康管理を徹底する
- 良好な人間関係の維持
5-3 科学的根拠による効果
本書で紹介されている方法には科学的根拠があります。人との繋がりを大切にすることで分泌されるオキシトシンは、長期的な幸福感を促す重要なホルモンです。また、ヨガや瞑想が推奨される理由は、何も考えない時間を持つことで脳がリセットされ、パフォーマンスが上がるからです。小さな成功体験を積み重ねて脳に記憶させることで、自己効力感が向上するメカニズムも科学的に解明されています。
まとめ
世界の一流が実践する休日活用術は、単なる休息ではなく、戦略的な自己投資の時間として休日を位置づけることにあります。自己効力感を高め、土曜と日曜を使い分け、1日7分からでも始められる実践的なメソッドは、忙しい現代人でも取り入れやすい内容となっています。
本書の最大の価値は、Microsoft本社でビル・ゲイツやスティーブ・バルマーと働いた著者の実体験に基づく内容が説得力を持ち、科学的根拠も併せて示されている点です。休日の過ごし方を見直すことで人生を劇的に変える可能性を示しており、まずは1日7分から、小さな一歩を踏み出すことが、大きな変化への第一歩となるでしょう。
あえてアクティブに動く日と休む日に分けて過ごすことで、不思議とリフレッシュでき、月曜からまた1週間頑張れるようになります。行動のハードルを低く設定し、計画を立てることから始めて、目標があるから達成した時に脳は成功体験と認識し、「自分はやればできる」というマインドが少しずつ作られていくのです。