犬塚壮志氏は、元・駿台予備学校の化学科講師です。
25歳という史上最年少で駿台の講師に就任し、受講者数は年間3,000人を超えていました。
「東大合格請負人」として大きな実績を残した後、現在はビジネスセミナーや企業研修の講師として活動しています。
本書は、その「教えるプロ」が体系化した説明スキルの集大成であり、2024年のベストセラーとなった一冊です。
本書が注目される理由
説明力は誰にでも必要なスキル
「説明が下手」と悩む人は少なくありません。
仕事の報告、プレゼン、日常会話まで、説明の場面は日々訪れます。
しかし、説明の仕方を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。
本書が支持される理由はシンプルです。
「説明がうまい人」と「下手な人」の違いを明確に言語化しているからです。
- 年間3,000人以上への授業
- 偏差値の異なる多様な生徒への指導
- 「わからない」を「わかった」に変える実践の蓄積
この経験が、本書の説得力を支えています。
説明の本質は「相手の頭の中」にある
本書の根幹にある考え方は明快です。
説明とは「自分が話すこと」ではなく「相手が理解すること」だという主張です。
多くの人は説明するとき、自分の言いたいことを整理します。
しかし本書では、まず相手の頭の中を想像することが出発点だと述べられています。
この視点の転換が、本書全体を貫くテーマとなっています。
説明下手に共通する問題点
なぜ「伝わらない」が起きるのか
犬塚氏は、説明が伝わらない原因を明確に分類しています。
- 知識の呪い:自分が知っていることは相手も知っていると思い込む
- 情報の詰め込み:一度に多くの情報を伝えようとする
- 前提のズレ:相手の理解レベルを把握していない
- 構造の欠如:話の順番が整理されていない
特に「知識の呪い」は、専門知識を持つ人ほど陥りやすい罠です。
犬塚氏自身も、予備校講師になりたての頃にこの問題にぶつかったと述べています。
「わかりやすい」の正体
本書では、「わかりやすい説明」の条件が具体的に定義されています。
犬塚氏によれば、人が「わかった」と感じる瞬間には共通点があります。
それは、新しい情報が「すでに知っていること」とつながった瞬間です。
つまり説明がうまい人は、相手の既存知識を的確に把握しています。
そしてその知識と新しい情報を「橋渡し」する技術に長けているのです。
説明がうまい人の思考法
「相手の頭の中」を想像する
本書で最も重視されているのが、この思考法です。
説明の準備段階で、相手について次の3点を考えます。
- 相手は何を知っているか(既存知識の把握)
- 相手は何に興味があるか(関心の把握)
- 相手はどこでつまずくか(理解の障壁の予測)
犬塚氏は予備校時代、授業の前に必ず生徒の立場で問題を解き直していたと言います。
「教える側」ではなく「学ぶ側」の視点に立つことが、説明力の出発点です。
「IKPOLET法」という独自フレームワーク
犬塚氏は、説明の技術を7つのステップで体系化しています。
それが「IKPOLET法」です。
| 頭文字 | 要素 | 内容 |
|---|---|---|
| I | Interest(興味) | 相手の興味を引く |
| K | Knowledge(知識) | 相手の既存知識を確認する |
| P | Purpose(目的) | 説明の目的を明確にする |
| O | Outline(大枠) | 全体像を先に示す |
| L | Link(連結) | 既存知識と新情報をつなぐ |
| E | Example(具体例) | 具体例で理解を深める |
| T | Transfer(転移) | 他の場面に応用させる |
この7つのステップを意識するだけで、説明の質は大きく変わります。
中でも「K(相手の知識の把握)」と「L(つなげる)」が核心です。
すぐに使える説明テクニック
「たとえ話」の威力
本書では、説明を「わかりやすくする」ための具体的な技術が多数紹介されています。
中でも最も強力なのが「たとえ話(アナロジー)」です。
犬塚氏は化学の授業で、次のようなたとえを使っていました。
- 原子の構造を「太陽系」にたとえる
- 化学反応を「料理のレシピ」にたとえる
- 濃度の概念を「カルピスの薄め方」にたとえる
相手がすでに知っているものに置き換えることで、難しい概念が一気に理解しやすくなります。
「数字」と「比較」で具体化する
抽象的な説明を具体化するために、本書では以下の技術も推奨されています。
- 数字を使う:「多い」ではなく「3倍」と言う
- 比較を使う:「すごい」ではなく「AよりBの方が〇〇」と言う
- ビフォーアフター:変化を見せることで印象に残す
これらは、ビジネスの報告やプレゼンでもすぐに活用できるテクニックです。
説明力を高める実践習慣
日常で説明力を鍛える方法
本書は理論だけでなく、日常で実践できるトレーニング法も紹介しています。
- 子どもに仕事の内容を説明してみる
- 専門用語を使わずに業務を説明する練習をする
- 相手の反応を観察し、伝わったかを確認する
- 説明の後に「つまりどういうこと?」と聞いてみる
説明力は才能ではなく、日々の訓練で磨ける技術だと犬塚氏は強調しています。
「説明の設計図」を事前に描く
説明がうまい人は、話す前に「設計図」を描いています。
- 結論:最も伝えたいことは何か
- 根拠:なぜそう言えるのか
- 具体例:たとえばどういうことか
この「結論→根拠→具体例」の構造を事前に整理するだけで、説明の明快さは格段に向上します。

ビジネスでの活用場面
会議・報告・プレゼンへの応用
本書の内容は、ビジネスのあらゆる場面で応用可能です。
- 会議での発言:結論を先に述べ、根拠を添える
- 上司への報告:相手が知りたい情報を最優先にする
- プレゼン:聞き手の知識レベルに合わせて言葉を選ぶ
- 部下への指示:「なぜやるのか」の目的を先に伝える
説明力が上がると、仕事全体の生産性が上がる。
本書を読むと、その実感が得られるはずです。
本書のポイント
本書は、説明に苦手意識を持つすべての人に向けた実践書です。
年間3,000人以上に教えてきたプロ講師の知見が、惜しみなく詰め込まれています。
読後すぐに試せるテクニックが豊富なため、「今日の会議から使える」即効性のある一冊と言えます。
説明力を武器にしたいビジネスパーソンにとって、必読の書です。
- 説明の本質:説明とは「自分が話すこと」ではなく「相手が理解すること」である
- 相手起点:相手の知識・関心・つまずきポイントを事前に想像する
- 知識の呪い:自分の常識は相手の常識ではないと自覚する
- IKPOLET法:7つのステップで説明を設計する
- たとえ話:相手の既存知識と新情報を橋渡しする最強の武器である
- 結論ファースト:「結論→根拠→具体例」の順で話す
- 説明力は技術:才能ではなく、訓練で誰でも身につけられる