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自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学

しんめいP(本名:新明史)著「自分とか、ないから。教養としての東洋哲学」は、哲学者であり音楽家、そしてYouTuberとしても活躍する著者が、東洋哲学の核心を現代人向けに解き明かした一冊です。

本書は2020年に出版され、難解とされがちな仏教や老荘思想などの東洋哲学を、「自分とは何か」という切り口から平易に解説しています。

SNSやビジネスシーンで「自分」への囚われに苦しむ現代人に対して、2500年前から東洋で育まれてきた「無我」の智慧を提示し、生きづらさからの解放の道を示す内容となっています。

著:しんめいP
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「自分」という幻想からの解放

現代人が抱える「自分」の重荷

現代社会においては、「自分らしさ」や「個性」が強調されています。

しかし著者は、この「自分」への執着こそが苦しみの原因だと指摘します。

SNSでの自己アピールや他者との比較によって、多くの人が「自分」を演じることに疲れ果てています。

本書では、仏教の根本思想である「無我」の考え方が、この問題に対する解決策として提示されています。

「無我」とは自己否定ではない

著者は「無我」について重要な誤解を解きます。「無我」とは自己否定や自己嫌悪ではありません。

むしろ、固定化された「自分」という概念から解放されることで、より自由に生きられるという逆説を説明しています。

YouTubeチャンネル「シンメイズ哲学」でも述べられているように、「自分がない」状態とは、本来の豊かさを取り戻した状態なのです。

東洋哲学の現代的解釈

仏教の「縁起」思想を日常に活かす

本書の特徴は、難解な仏教用語を現代の言葉で説明している点です。

例えば「縁起」の思想は、全てのものは相互に関連し合い、独立した「自分」など存在しないという考え方です。

著者はこれを、現代のネットワーク理論や生態系の考え方と結びつけて説明しています。

次のポイントが特に読者の共感を呼んでいます。

  • 「自分」は固定的なものではなく、常に変化している
  • 他者との関係性のなかでしか「自分」は存在しない
  • SNS時代こそ「無我」の視点が必要である

老荘思想の「無為自然」の現代的意義

老子や荘子の思想も現代的に解釈されています。

特に「無為自然」の考え方は、過剰な努力や競争に疲れた現代人に響くものがあります。

著者によれば、必要以上に頑張らない「ほどほど」の生き方こそが、東洋哲学の知恵なのです。

実践としての東洋哲学

日常生活に取り入れる「無我」の実践法

本書が単なる思想解説にとどまらない理由は、具体的な実践法が示されている点です。

著者は日常の中で「無我」を体験するためのいくつかの方法を提案しています:。

「無我」を体験するための方法
  • 「私は〜である」という思考パターンへの気づき
  • 「見る」と「見られる」の区別を超える観察法
  • SNSを使う際の意識的な距離の取り方

これらの方法は難しい修行ではなく、通勤電車の中や仕事の合間にもできる簡単なものばかりです。

「今、ここ」に生きるためのマインドフルネス

本書では東洋哲学とマインドフルネスの関連性も説明されています。

著者によれば、マインドフルネスの本質は仏教の「今、ここ」に生きる智慧そのものです。

読者からは「瞑想を始めてから、常に何かを考えていた脳が休まる時間ができた」といった感想が多く寄せられています。

西洋哲学との対比から見えてくるもの

「考える我」と「無我」の違い

デカルトの「我思う、ゆえに我あり」に代表される西洋哲学と、「無我」を説く東洋哲学の対比は興味深いものです。

著者は両者を単純に優劣で語るのではなく、相補的な関係にあると説明しています。

西洋哲学が「個」の確立に貢献したのに対し、東洋哲学はその「個」の幻想性を指摘するのです。

グローバル社会における東洋哲学の意義

情報過多のグローバル社会において、東洋哲学の「無我」や「空」の思想が持つ意義は大きいと著者は主張します。

データによれば、近年欧米でも瞑想やマインドフルネスの実践者が急増しており、2019年の調査ではアメリカの成人の14%が瞑想を実践しているそうです。

東洋哲学は今や世界的な知恵となっています。

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本書から得られる現代人のための智慧

著者のYouTubeチャンネル「シンメイズ哲学」の登録者数は20万人を超え、東洋哲学への関心が若い世代にも広がっていることを示しています。

本書はその入門書として最適であり、哲学の予備知識がなくても十分に理解できる内容となっています。

本書は、右下の領域を深く掘り下げながらも、他の思想との関連性も示す包括的な内容となっています。

「自分とは何か」という問いに向き合いたい全ての人に推薦できる一冊です。

本書から読者が得られるポイント
  • 「自分らしさ」に囚われない自由な生き方
  • SNSや評価社会での「見られる自分」からの解放
  • 他者との繋がりの中で生きる喜びの再発見
  • 過剰な努力や競争から離れる「ほどほど」の智慧
  • 日常の中で実践できる具体的な瞑想法